+楽  園+




雪が解け、若葉が芽吹き、花が咲くそんな春が終わりかけの頃、ある男と女がおりました。

男は男であるがゆえに、女はこれまた女であるがゆえに、惹かれあったのかはさだかではないが、とにかく同じ場所で、同じ時を過ごしていました。

まあ、とりあえず、そんな感じの二人の会話を、覗いてみましょう。



「わたくしのこと、美しいとお思い?」

男の腕の中にいる女が、ふいにそんな質問をなげかけた。

その急な問いに、男は驚いた様子もなく、むしろ楽しんでいる様子を覗かせたように見える。

「ああ。とても美しいと思うよ。」

女は、明らかに、皮肉交じり表情を浮かべた。

「まあ、ひどい方・・・。嘘ばっかりおっしゃるのね。」

「嘘とは・・・?今までわたしは、女性に対して、嘘を口にしたことはないと思っているのだかね」

男はそういいながら、女の長い髪に、自分の指を絡める。

その慣れた手つきに、男の過去を一瞬垣間見たような気がした。

「わたくしは、年齢を重ねすぎましたわ。若い娘に、敵うはずがございませんもの」

「・・・あの、桜の木を見てごらん」

今までと脈絡のない男の言葉に、女はくびをかしげながらも、男が指差すほうの桜の木に、そっと視線を移した。

それを確認した後、男は続ける。

「過去、桜を歌った歌人は、どれほどいただろうか。その中でも、散る桜を惜しむものが多い。それほど、桜が散る様子は、
美しいのだよ。
散りゆく運命を背負っているからこそ、それは人を魅了する。散った後、あの美しさは、刹那の幻であったのかと、
そう思わずにはいられない衝動にかられてしまう。それと、女性は同じこと。若い娘もいいだろう。輝かしい美しさがある。
はち切れんばかりの美しさも、魅力的だ。けれども、今の君のように、若さを失いかけ、それを取り戻さんと必死でもがいて
いるときにこそ、わたしはその姿に目を奪われるね。今までの光り輝いていた自分に、一筋の影が差し込んだとき、他の何にも
比類しない美しさがあるとわたしは思うのだよ」

「・・・それは・・・」

「何かね?わたしの素晴らしい言葉に、涙でもしたのかね?そうだろう、そうだろう。ああ。思わず、自分でも感動してしまったよ!」

「わたくし・・・そんなに必死にもがいているようにみえて・・・?」

女の額には、あきらかに青い筋が浮かんでいる。

「へ・・・?」

「わたくし、そこまで年ではありません!!!!!」

そんな言葉を男に浴びせると、女は足音を響かせながら、部屋から出て行ってしまいましたとさ。

おしまい☆



























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